2.胆石症の合併症

 胆石症の説明のページでも書きましたように胆石自体は毒物でもなければ,発癌性があるわけでもないので取り除く必要は差し迫ったものではないのですが,胆嚢内に結石ができることでそれが,胆汁や,膵液の流れを妨げたり,結石による慢性的な刺激が胆嚢壁に障害を生じさせたりといた.合併症が発生させる原因になるために,合併症の生じたときに早急に,または合併症の発生を予防する目的で手術を中心とした治療が行われているのです.


a)胆嚢炎


 胆嚢内の石が胆嚢中を自由に転がっている時に食事をすると胆嚢は収縮して胆汁を絞り出そうとします.
結石が出口近くなければそのまま胆汁だけが流れますが,出口近くにある時に胆嚢が収縮すると.ラムネの玉が飲み口に引っ掛かったような状態(嵌頓:カントンと呼びます)になり,胆汁の流れをせき止めてしまい,この時に.胆嚢の内圧は上昇.患者さんは痛みを自覚します.
 胆汁はいろんな物の混ざった不純な液ですから,胆汁が胆嚢内に停滞したままの状態が続くと細菌感染,繁殖,炎症が起こり急性胆嚢炎となります.
こうした胆石の嵌頓,胆嚢炎が,一度こっきりでなく,食事後たびたび繰り返されると胆嚢の壁は次第に荒廃して来て慢性胆嚢炎になるってしまうこともあります.こうなってはせっかくの胆嚢の働きも役に立たなくなってしまいます.
それだけでなく炎症で胆嚢が破れて,胆汁が腹腔内へ流れ出し,腹膜炎を起こし,命にかかわることにもなりまねません.
通常はこうした胆嚢炎に対し,強力な抗生物質を投与して炎症に対するのですが,あまりに炎症が重篤な時にはこれも奏功しません.そんな時には体外から胆嚢を穿刺(長い針で突き刺す)して胆嚢内の胆汁を体外に吸い出すPTGBDという手技が必要となることや,緊急手術が必要になることもあります.


b)胆管炎


 総胆管内へ落ち込んだ結石の大きさが,胆汁が総胆管から十二指腸に注ぐところにある弁(ファーター乳頭)の口径より大きい場合には,結石は総胆管の中で留まります.これが総胆管結石です,
ところがファーター乳頭に結石が引っ掛かりはまり込んでしまうと,肝臓,胆嚢からの胆汁が十二指腸側へ流れなくなり,停滞してしまういます.
このようになると肝臓の中にある細い胆管から総胆管までの胆管全体の胆汁が流れなくなり,うっ滞することになり,この状態が続けば胆汁が感染して,化膿性胆管炎となります,
以前はこの疾患が原因で命を落とす人も多,く緊急に処置が必要となります.
まず肝臓の中の胆管の中に向かって,皮膚,肝臓を通して針を刺し胆汁を体外に吸引する処置をとることが,必要となります.


c) 膵炎


 総胆管結石の中に小さな胆石があるときに,膵炎を起こすことがあります.
総胆管がファーター乳頭から十二指腸に入る少し前に膵管の出口があります.
膵管は,膵臓で作られた消化酵素を含む膵液を集めて総胆管へ流し,胆汁と一緒に十二指腸内へ注ぎます.
総胆管の結石が膵管の出口に引っかかる(嵌頓といいます)と膵臓から膵液の出口が塞がれ,これも命にかかわることがあるのです.
膵液に含まれる消化酵素は蛋白質や脂肪を溶かす作用もあるので膵管から十二指腸へとスムースに流れずに,停滞すると膵管がどんどん拡張し,膵液は次第に膵臓組織内へ滲みだし,蛋白質で作られている膵臓自身や周囲の組織を溶かしていってしまいます.自分の作った消化酵素で,自身を消化するということです.


d) 胆嚢癌
石によって胆嚢炎を繰り返した胆嚢が癌になりやすいということ言われています.胆嚢癌は全体の0.5%の方がかかると言われる珍しい癌すが,長年胆石を持って症状を繰り返している人はその10倍以上ともいわれ,胆石は胆嚢癌発生に関与している可能性が高いと言われています.
 この数字は教科書に載っているものですが,それほど高率ではないと言われ,胆石の症状の無い方(無症候性胆石症)の方は普通の人と差はないと言われていますが,症状のある方は胆石の無い方に比べれば,胆嚢癌になられる方はかなり高率であるということですので,要注意です.

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