開腹手術による合併症

 手術には何パーセントかの合併症がつきものです。

@ 創感染症,縫合糸膿瘍:

胆嚢炎が重篤で膿瘍を形成している場合など,開腹創から洗浄を行うのですが,その傷に細菌が付着して創が感染する。とそこに膿の塊を形成してしまうことがあります.また腹腔内の操作が終了して閉腹するのですが,この時に順に腹膜,筋膜(腹直筋などの筋肉を包んでいる強靭な)膜,皮膚と3つの創をすべて閉鎖する必要があります.
皮膚縫合は退院前に除去するので問題はないのですが,筋膜を閉鎖した縫合糸はそのまま創の中に残ります.この筋層の縫合糸が感染の元になったり,糸がアレルギーの元になり,そこに感染して縫合糸膿瘍なることもあります.この状態でも多くはそのままシャワーなどで創を洗浄すれば治癒しますが,頑固な場合,筋層を縫合した糸を抜去しないと治らない場合があり,結構長時間の治療が必要なことがあります.

A 腹壁瘢痕ヘルニア:

多くは創感染で,筋層の糸を抜糸した場合に起こります.
膿瘍を形成した縫合糸を抜糸することで,皮膚も閉鎖して創感染は治癒するのですが,ばっしさえれた筋層は十分に閉鎖していないことができてしまい,この場所に筋層が欠損することになります.
すると腹腔内の臓器を守っている一番強靭な組織である筋膜が欠損した,腹膜と,皮膚だけで覆われた部分ができてしまい,この部分が瘤のように飛び出してしまいまし.これが腹壁瘢痕ヘルニアです.


B 腸閉塞:

手術後最も多い合併症です。癒着により腸閉塞が起きる可能性があります。


上記のように胆嚢を取り出す時には皮膚と下の腹筋の層を開くのですが最後に腹膜を切開して腹腔内に入らなければなりません.も裂かなければなりません.また腹筋の下にある腹膜も切開しなければ胆嚢は摘出できません.

ところが腹膜は腸同士が癒着しないような皮膜を形成して,腸は自由にお腹の中で動き回って,先へ先へと食べものを送っているのですが(蠕動運動)開腹手術により腹膜に傷が入ってしまいます.そのためこの傷の部分に腸管や脂肪組織が癒着してしまいます.腸のどこかが腹壁にくっついて自由が束縛されると,腸内容の流れが上手く行かなくなるために腸内容の移動に支障が起こり,食べ過ぎたりすると流れにくくなる.時には停留してしまう.こうした状態がひどくなると腸閉塞(手術後の癒着性腸閉塞)という状態になるのです

ただ手術をされた方が全員が腸閉塞になるというわけではなく,一箇所が癒着しても前後の腸管は自由に動くことができるので,腸はがんばって内容物を先へ先へと送り出してくれているので,癒着している場所があるというだけでは簡単には腸閉塞にはなりません.

ただし癒着した部位を一度に大量の内容物が移動しなければならなくなった時など、そこを通過できなくって腸閉塞になります.

もし腸閉塞になりかけても数日絶食すれば,腸の蠕動で腸内容が少しずつ先に送られて,そのまま収まる場合が大半で,入院する必要があるのは5%くらいの人で.絶食してみて.駄目なら鼻から胃を通って小腸内へ閉塞している手前まで長いチューブを入れてその間の腸の中身を吸い出してやると大概はこの方法で1~2週間で治ります.私たちの病院では再手術をする患者様はこれらの治療で改善しない術後腸閉塞で入院された方のなかの約10%です.


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